園長からのひとこと【2020/2】

今年度も、残すところ、あと一ヶ月となりました。四月には見ることが出来なかった、それぞれの子ども達の成長した姿が、保育園を彩っています。発表会では、本当に多くの保護者の皆様にお越しいただき、まことにありがとうございました。皆様の温かい眼差しが、子ども達の何よりもの力になったことと思います。
さて、先月から新型コロナウイルスが中国を中心に世界中で猛威をふるっています。日本でも、埼玉県において6歳以下の末就学児の男の子が感染するなど、予断の許さない状況が続いています。ウイルスというのは、人の眼には見えません。眼には見えない働きが、人の命を脅かしていくのです。私たちは、眼には見えない様々な働きの中に生きていることを、改めて考えさせられます。仏教では、人の眼で認識し感じていくものは、この世界の本当の姿ではないことを教えています。むしろ、人の眼で感じることのできないものの中に、人が本当に大切にしなければならないものが、たくさんあることを教えています。眼に見えない働きが、命を脅かすのと同じように、眼に見えないたくさんの働きが、私の命を生かしてくださってもいるのです。
手洗いやうがいなど、眼に見えない働きから身を守ることを大切にしながら、たくさんの眼に見えない温かい働きの中にあることも、子ども達と一緒に味わっていきたいですね。

2020-03-01

園長からのひとこと【2020/1】

新しい年が明けて、早くも一か月が過ぎようとしています。今年の冬は、本当に暖かい日が続いています。過ごしやすい反面、子ども達と一緒に冬の景色を楽しめないのが残念です。

さて、先日、親鸞さまの報恩講のご縁で、「殺生(せっしょう)」という言葉についてのお話を聞かせていただきました。「殺生」という言葉は、一般的には、「生き物を殺す」という意味で使われています。しかしこの「殺す」という言葉には、単に「命を殺める」という意味だけでなく、「命を無駄にする」という意味が含まれているそうです。動物や魚だけでなく、一粒のお米も野菜も掛け替えのない命です。私たちは、様々な命を殺めずに生きていくことは不可能です。しかしその殺め頂いた命を、けっして無駄にしないような生き方はできるのではないでしょうか。様々な働きの中で生かされている私であることに感謝し、何事にも真面目に一生懸命させていただく毎日を大切にしたいものです。

いよいよ明日はみんなが楽しみにしている発表会です。太陽の光を受けて輝く雪のように、子ども達もご家族の温かい眼差しを受けて、舞台の上でより一層輝いていくと思います。どうぞ、ご家族そろってお越しください。お待ちしています。

2020-01-31

園長からのひとこと【2019/12】

年末の慌ただしさが、身に染みる季節になしました。令和最初の年も終わりを迎えようとしています。

さて、今年は、大変暖かい冬を迎えています。まだ畑にトマトやナスビなどの夏野菜が見られたり、庭にアジサイの花が咲いたりと、植物も冬の暖かさに戸惑っているようです。今年、スウェーデンの16歳の女子高生であるグレタ・トゥーンベリさんが、国連で世界の温暖化対策について怒りのスピーチをしたことが注目されました。世界の多くの人が、地球の環境破壊に大きな危機感を持っている表われです。

人間が幸せに暮らすために作られた多くの工場が、環境破壊の大きな原因だといわれています。幸せに暮らすために作られたものによって苦しめられるとは、実に皮肉なものです。お釈迦様は、自分の幸せだけを追求するところに、本当の安らぎは決して訪れないことを教えています。今日の地球の環境破壊は、人間だけの幸せを追求してきたところに大きな原因があるような気がします。

仏教では、湿気の中から生まれるカビのような命にも仏様の慈愛が詰まっていると教えています。自分の身の回りにある様々な命を愛おしく思える仏様のような眼差しは、これからの世界では、本当に大切なものになってくるのではないでしょうか。暖かい年末を迎えた今年、改めて、自分以外のものに対する優しい心遣いについて、共に振り返る年にしていきたいですね。

2019-12-26

園長からのひとこと【2019/12】

風の冷たさが身に染みるようになりました。寒い冬の季節が訪れようとしています。

さて、先日、今泉忠明さんという動物学者の先生が書かれた猫の脳に関する書籍を読む機会がありました。猫の脳は、人の脳の基本構造とほぼ同じだそうです。しかも猫の脳は、他の哺乳類と比較して、扁桃体という愛着形成に深く関わる部分が発達しており、特に母性愛が強い動物だということでした。そんな猫の成長にとって最も大切な時期は、生まれてから12週目までの母親と過ごす時期だそうです。人への攻撃などの問題行動を持つ猫の多くは、生後8週目までに母親から引き離された猫が多く、欧米諸国の先進国では、8週齢未満の子猫を母親から引き離して販売することを禁止する法律が一般的だといいます。

一方、人間の脳の基本的な構造は、3歳頃までに出来上がるそうですが、3歳という人間の年齢を猫に換算すると、ちょうど生後8週目から12週目に該当するそうです。今泉先生は、人間の脳と心の発達も、猫と同じく幼児期にどれだけ親の愛情を受けたのかが、とても大切であることを主張されています。

群れで行動しない猫は、一匹で生き抜いていく様々な力と知恵を、わずか生後12週目までの間に母親から愛情深く教え込まれるそうですが、その時間は、母猫と子猫にとって、とても幸せな時間だといいます。人間における幼児期も、その人生の時間の中では、ほんのわずかなものです。年末に向けて慌ただしい季節になりますが、親子の幸せな瞬間を大切にさせていただきましょう。

2019-11-29

園長からのひとこと【2019/11】

朝夕の空気が冷たくなり、あちらこちらに秋の深まりを感じられる季節になりました。

さて、先日、10 月22日に天皇陛下のご即位が国の内外に正式に発表される、即位礼正殿の儀が皇居において執り行われました。天皇皇后両陛下をはじめ、日本の皇族の方々が、十二単などの日本の伝統的な衣装に身を包み儀式に臨んでいるお姿は、とても厳かなものでした。一方、190以上の国々から招かれた多くの賓客の方々の衣装も、千差万別で目を引くものばかりでした。全員が同じような衣装ではなく、それぞれの自国の文化に育まれた違う正装を身につけた方々が、一同に集っている光景は、とても華やかで美しいものでした。

それぞれの違う歴史を持ち、違う姿をしている人々が、一同に集って日本の国の新たな門出をお祝いしてくださる姿は、平和な温かさを感じさせてくれるものです。違いを認め合うことの温かさと美しさを改めて教えていただいたような気がいたします。

国だけでなく人それぞれも、みんな違いを持っています。仏教では、それぞれの色の花が、それぞれの色の光を輝かせていることを大切に教えています。様々な違う光に出会うことによって、人はより豊かに成長してゆけるのだと思います。新しく始まった令和の時代、違いの中に輝きを味わい、みんなが平和に温かく暮らせる日々を大切にしていきたいですね。

2019-11-01

園長からのひとこと【2019/10】

朝夕の空気が、やっと冷たくなり、秋の訪れを間近に感じる季節になりました。保育園では、運動会に向けた練習が連日行われ、子ども達のはじけるような元気な姿が、園内に満ち満ちています。
さて、先日、ある本の中で、こんな言葉に出会いました。「犬が犬らしくないことを やることはめったにないが 人間はよく 人間らしくないことをやる(中略)甘いものを 見つけた蟻は 必ず集団に持ち帰るが 人間はこっそり ひとりで食べようとする」
人間らしさというものについて、改めて考えさせられる言葉でした。仏教では、「恥ずかしい」という思いがある存在を人と定めています。「恥ずかしい」という感情は、自分自身の姿を振り返り反省していく姿がなければ生まれてきません。また、それは、自分以外の視線を感じながら生きるということでもあります。様々な人々の眼差しの中で、人は、自分の姿に気づかされ、育てられていくものです。 しかし周りの多くの人々の眼差しを忘れる時、人は、人間らしさを失っていくのかもしれません。
多くの温かい眼差しの中で育てられていく子ども達は、幸せです。運動会に向けて一生懸命頑張っている子ども達です。その子ども達に注がれる多くの温かい眼差しをお待ちしております。運動会には、ご家族そろってお越しください。

2019-10-01

園長からのひとこと【2019/9】

厳しい暑さも次第に影をひそめ、朝夕は、涼しい空気に包まれるようになりました。

さて、今年は、8月から台風が何個も発生する異常な気象が続いています。8月15日の終戦記念日も、今年は、ほとんどが台風のニュースばかりで、残念な思いがしました。あおり運転や韓国との関係悪化、香港のデモなど、人の心が、どこか荒んできているこの時期に、改めて戦争について深く心を傾けていくことは、本当に大切なことだと思います。

今から約1400年前、有名な『十七条憲法』において「和をもって貴しとなす」と言われた聖徳太子は、仏教を心から敬っておられた政治家でした。あの権力争いが絶えなかった古代の日本において、聖徳太子が摂政に就いておられた間だけ、不思議と戦争が起きていません。その聖徳太子は、『十七条憲法』第十条において、こんなことをおっしゃっています。
原文は難しいので、意訳でご紹介します。

「人と意見が違うからといって怒ってはなりません。人には皆、それぞれ曲げることのできない心があります。自分か正しいと思うことが、必ずしも相手にとって正しいことではありません。私は、物事を見通すことのできる聖人ではないのです。また、相手が、物事の分からない愚か者でもないのです。お互いに、聞違いを起こしやすい、普通の人間であることを忘れてはなりません。相手が怒った時は、相手を怒らせてしまった自分自身の過ちを反省しなさい。」

人の心は、時として、恐ろしいほどに暴走していくことがあります。自分を見つめる目を持ち、相手を思いやる心を持つことの大切さは、いつの時代でも変わらないでしょう。親子共々、戦争を知らない世代だからこそ、年に一度の終戦記念日は、大切に心を寄せていきたいですね。

2019-08-30

園長からのひとこと【2019/8】

遅い梅雨入りを迎え、すっきりしない天気が続いています。しかし、時折聞こえるセミの声が、本格的な夏が間もなく到来することを知らせています。

さて、先日の盆踊り大会では、雨の中、たくさんの保護者の方々にご協力をいただきました。おかげさまで、雨にもかかわらず、子ども達にとって、とても幸せな一日になったことと思います。ありがとうございました。

その盆踊り大会で、微笑ましい一幕がありました。今は中学生に成長した卒園児のお母さん方が、数人集まって談笑しておられました。口々に、こんなことをおっしゃっておられたのです。「私たちも、またやりたいねぇ」「頼まれたら、いくらでも手伝うよねぇ」「なんか、子どもが大きくなるって寂しいねぇ」

楽しそうにお店をお手伝いされている保護者の方々を目にして、なんとも言えない懐かしさと羨ましさを感じておられたようでした。

子育ては、苦労の連続です。しかし後から振り返ると、人生の中でこれほど幸せな日々はないのかもしれません。保育園時代の可愛らしい子どもと過ごす時間は、人生の中では、ほんのわずかな間だけです。自分のためではなく、愛する子どものために一生懸命になれる瞬間というのは、やはり人生の中での輝きではないでしょうか。

苦労したことが幸せに感じられるというのは、とても素敵なことだと思います。苦労の中にも、子ども達と過ごす一日一日に幸せを味わい、大切に過ごさせていただきたいものですね。

2019-07-30

園長からのひとこと【2019/7】

雨に濡れた紫陽花の美しさが、心和ます季節になりました。田んぼで鳴くカエルの声も、まもなく訪れる梅雨の季節を告げています。

先日、ある研修会で、ヨーロッパの一部の若者の中で、ナチスの思想に共感するナチズムを標榜する集団が出てきていることを聞かせて頂きました。ヒトラー率いるナチス・ドイツは、第二次世界大戦中にユダヤ人をはじめ、多くの人々を大量虐殺したことで知られています。その思想の特徴は、人々の中に「生きるに値しない命」を認めていくところにあります。自分たちの都合を基準にして、生きるに値する命と値しない命を認めていくのです。今、再び、そのような恐ろしい考えを持った若者達が、世界の中で出現していることに、言い知れない不気昧さを感じたことでした。

この世界に生きるに値しない命など、一つとしてないことを仏教は教えています。どんな命をも平等に慈しんでいく、そんな仏様の温かい眼差しは、私たちに一つひとつの命の輝きを教えてくれます。生きていること自体が、そのままで尊い意味を持つことを味わえる世界があるのです。

これからの世界を作っていく子ども達には、どんな命をも同じように大切に出来る、優しく柔らかい心をいつまでも大切に持ち続けて欲しいものですね。

2019-06-28

園長からのひとこと【2019/6】

令和の時代が幕を開け、早くも一ケ月が過ぎようとしています。新人園児の子ども達も、すっかり保育園生活に慣れ、子ども達の明るい声が保育園に響いています。

さて、5月14日に大阪の百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録されることが決まりました。これで、日本の世界遺産は、文化遺産と自然遺産を合わせ23件となるそうです。 23件の中には、萩の産業遺産群など、私達にとって身近なものも含まれています。そんな身近な世界遺産の一つに、平成25年に無形文化遺産として登録された和食があります。

こってりとしたソースで味付けをする西洋料理とは違い、和食は、素材そのものの味を非常に大切にする点や、また、一つひとつの料理に、非常に手間暇をかけている点などが、世界の人々から評価される理由です。西洋のような家畜による食文化ではなく、天候などの様々な条件に左右される農耕や漁業によって育まれてきた日本の食文化には、食べ物は恵まれたものという感覚があります。素材を非常に大切にするのも、自分で手に入れたものではなく、様々な不思議な働きの中で、たまたま恵まれたものという感覚が、日本人にはあったからでしょう。

「食う、食べる、頂く」というように、同じ食事をするにしても、三通りの心持ちがあります。たまたま恵まれた尊い命を大切に頂くという心が、世界を驚かす日本の食文化を育ててきたのではないでしょうか。世界にとって遺産となるような食文化の中で育てられている私たちです。今一度、子ども達と一緒に、命を頂くという大切な感覚を、毎日の食事の中で丁寧に確認していきたいものです。

2019-05-30