短い秋が終わりに近づき、急に冬の気配を感じるようになりました。感染症の流行も心配されます。体調に気をつけながら、寒い冬の季節を楽しみましょう。
先日、ある研修会で、子ども自身の考える力についてのお話を聞かせていただきました。小学一年生の男の子のお話でした。広島の平和記念公園には、被爆樹のアオギリがあります。原爆の恐ろしい熱波に耐えて生き続けている樹木です。その話を、アオギリの前で先生から聞いていた一人の小学一年生の男の子が、「熱かったね」と言いながら、自分の水筒の中のお茶を半分、アオギリの木の根元に注いだというお話でした。
子どもの素直で純粋な心の姿に、大人は、はっとさせられたのではないでしょうか。私達大人は、未熟な子どもに対して、正しいことを教えなければならないと思いがちです。それが行き過ぎると、子ども自身が考えることを阻害してしまい、大人の考えを押しつけてしまうことにもなります。しかし、子ども自身は、大人が考える以上に、素直で柔らかい心を持っています。その柔らかい心で、子ども自身が、たくさんのことを感じて考えていける環境を用意してあげることが、とても大切だということでした。
これから年末に向け、忙しく慌ただしい毎日が増えてくることかと思います。そんな中でも、子どもから大人も大切な姿を教えられていくような、一緒に色んなことを感じたり考えたりするほっかりとした時間を大切にしていきたいですね。
2024/11/30
全国的に異常な残暑が続いていますが、少しずつ短い秋の気配が深まってきました。わずかな秋の季節を、めいっぱい楽しんでいきましょう。
さて、以前、今泉忠明さんという動物学者の先生が書かれた猫の脳に関する書籍を読む機会がありました。猫の脳は、人の脳の基本構造とほぼ同じだそうです。しかも猫の脳は、他の哺乳類と比較して、扁桃体という愛着形成に深く関わる部分が発達しており、特に母性愛が強い動物だということでした。そんな猫の成長にとって最も大切な時期は、生まれてから12週目までの母親と過ごす時期だそうです。人への攻撃などの問題行動を持つ猫の多くは、生後8週目までに母親から引き離された猫が多く、欧米諸国の先進国では、8週齢未満の子猫を母親から引き離して販売することを禁止する法律が一般的だといいます。
一方、人間の脳の基本的な構造は、3歳頃までに出来上がるそうですが、3歳という人間の年齢を猫に換算すると、ちょうど生後8週目から12週目に該当するそうです。今泉先生は、人間の脳と心の発達も、猫と同じく幼児期にどれだけ親の愛情を受けたのかが、とても大切であることを主張されています。
群れで行動しない猫は、一匹で生き抜いていく様々な力と知恵を、わずか生後12週目までの間に母親から愛情深く教え込まれるそうですが、その時間は、母猫と子猫にとって、とても幸せな時間だといいます。人間における幼児期も、その人生の時間の中では、ほんのわずかなものです。年末に向けて慌ただしい季節になりますが、親子の幸せな瞬間を大切にさせていただきましょう。
2024/10/30
厳しい残暑が続いていましたが、お彼岸が過ぎ、少しずつ秋らしい空気が満ちてきました。新園庭での初めての運動会に向け、子ども達の一生懸命な姿が、保育園を彩ってくれています。
さて、今年の残暑は本当に厳しく、お彼岸を迎えても、彼岸花があまり咲きませんでした。季節の花が見られないというのは、寂しい気持ちがします。本来、お彼岸に必ず咲く真っ赤な彼岸花は、葉っぱのない花として有名です。しかし、実は、彼岸花にもちゃんと葉っぱがあるそうです。それは花が枯れた後に、葉っぱだけが、人知れず球根から伸びてくるのだそうです。その葉っぱは、冬を越し翌年の夏まで枯れずに繁り、その間、光合成による栄養を球根に送り続けていきます。夏頃に葉っぱが枯れ、秋のお彼岸の頃に、栄養がたっぷりになった球根から、真っ赤な花が咲くのです。その花の寿命は、わずか一週間です。一週間の間、みんなに注目される真っ赤な花には、誰にも知られない葉っぱによる約10ヶ月もの地道な準備があるのです。残暑の厳しい今年は、まだ繁った葉っぱが、人知れず地道な準備をしているのかもしれません。
花だけではなく、命あるものの輝く姿には、人知れない様々な努力やその命に向けられた温かい働きが必ずあるものです。今年の運動会は、コロナ禍が明け、新園舎をバックに新園庭で開催する初めての運動会となります。子ども達自身の頑張りや多くの方々の温かい想いが、子ども達の輝きとなって新園庭にいっぱいに広がる素敵な時間にできたらと思います。温かい応援をよろしくお願いします。
2024/9/30
連日酷暑が続いた夏も、少しずつ終わりが近づいてきました。保育園では、4月に出来たばかりの新園庭で運動会に向けた練習が始まります。過ごしやすくなっていく季節の中、子ども達の成長がいよいよ楽しみですね。
運動会について、以前、ある60歳代の女性の方から、こんなお話を聞かせていただいたことがあります。その女性は、小学生の頃、とても運動が苦手で、運動会のかけっこでは、いつもビリだったそうです。一生懸命に走るけれども、どうしても速く走ることが出来ません。それが、その女性にとっては、とっても恥ずかしいことで、運動会の日が近づいてくるのが、毎年、憂鬱だったそうです。
しかし、ある年の運動会の日、お母さんの一言が、その女性の意識を変えます。その一言とは、「お母さんには、〇〇ちゃんの姿しか見えてないのよ」というものだったそうです。他の子と比べて、足が遅いことに悩んでいたその女性は、自分のありのままの姿をそのまま愛してくれる母親の眼差しに心が救われたといいます。そして、60歳を超えた今でも、その時の母親の温かさを思い出すと、どんなことでも頑張れるということでした。
人は、そのままの自分を認め愛してくれる眼差しがあれば、少々寄り道をしても豊かに成長してゆけるのでしょう。これから始まる運動会の練習では、子ども達それぞれに他とは比べようのないかけがえのなさを、園庭いっぱいに輝かせてくれることと思います。当日の子ども達の姿を楽しみに、温かい応援をよろしくお願いいたします。
2024/8/29
セミの声が本格的な夏の到来を告げています。大変暑い日が続いています。熱中症等に気を付けながら、暑い夏を楽しく過ごしていきたいと思います。
さて、先日、子どもの社会性についての興味深い記事を見つけました。社会性とは、コミュニケーション能力、協調性、マナーやモラルなど、成長し社会に出た時、異なる意見を持つ人達とも協力し、社会の中での居場所を自らが作っていける力です。この力が育まれる過程には、子ども時代の周りの大人の関わり方が大きく影響するといいます。
0歳~1歳の間は、親子のスキンシップが大切だそうです。親子の情緒の安定した愛情深い信頼関係は、すべての社会性の土台となっていくといいます。2歳~3歳の間は、子ども同士の争いを見守ることが大切だそうです。子ども同士、争いを通して、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちに気づいたりすることは、対人関係を築いていく上で、とても大切なことです。大人は、ケンカが終わった後、子どもと一緒に振り返りの時間を作り、学んだことを褒めたり、深めたりする関わりが大切だといいます。4歳~5歳の間は、地域行事等に参加して、色んな人々とコミュニケーションを図ることが大切だそうです。この年齢の時期は、コミュニケーションの量がポイントで、他者と関わる回数が多いほど、社会性も磨かれていくそうです。
社会の中で生き抜いていく力が育まれている子どもは、親の手から離れた後も自分の居場所を見つけ、社会の中での幸せをたくさん感じることの出来る大人になっていくことでしょう。暑い夏の時期は、親子の時間も少し増える時期でもあります。今しか過ごすことのできない親子の大切な時間を、子どもの幸せへと繋がる時間にしていきたいですね。
2024/7/30
雨に濡れた紫陽花の美しさが、心和ます季節になりました。田んぼで鳴くカエルの声も、梅雨の季節の到来を告げています。
先日、児童文学作家の、くすのきしげのりさんのお話を聞く機会がありました。くすのきさんは、現在、200タイトルを超える児童向けの絵本を発表されており、その作品は、日本のみならず海外においても広く読まれています。どの作品も、人の心の温かさを題材にした情感豊かな物語が紡がれており、ぜひ親子で読んでいただきたいおすすめの絵本です。
そのくすのきさんが、デジタル化が進む現代において、幼児期に紙の絵本を読むこことの大切さをお話くださいました。紙の絵本は、デジタル機器にはない手触り、重さ、匂いなど、五感を通して物語に触れることができます。また、質の良い物語は、大人も一緒に楽しめるものです。親子で五感を通して、同じ感動を共有できるのが紙の絵本の魅力だそうです。
絵本を読むことで、文章を読み取る力、絵から想像する力が育まれていきます。その力は、相手の心を推し量り、思いやる心へと繋がっていくといいます。また、様々な質の良い物語に触れることは、固定観念や先入観にとらわれない豊かな思考が育てられていくそうです。
幼児期の親子で絵本を読む時間は、子どもにとって、人としての情感が豊かに育っていく大切な時間だということでしょう。雨の多い梅雨の時期、親子でほっかりと感動できる素敵な絵本を読める時間も持てるといいですね。
2024/6/28
新緑が美しい季節になりました。これから梅雨の季節を迎えます。雨の季節ならではの美しさや楽しみも、子ども達と一緒にたくさん見つけていきたいと思います。
さて、嘉川保育園の広い園庭には、たくさんの虫達がいます。子ども達は、園庭の虫達と遊ぶのが大好きです。この虫について、先日、興味深い記事を見つけました。それは、2010年代以降、虫について、感情に似た脳機能を持っている可能性があることが、科学論文で報告されることが増えているというものです。虫にも、私達と同じ感情があることが、最近の研究で明らかになりつつあるというのです。
親鸞様は、あるお書物の中で「ものの身となる」というお言葉を遺されています。これは、仏様という存在が、どんな命に対しても、その命の身となっていくものであることを教えられたものです。命の身となるというのは、その命の心を聞き、その命と一緒に悲しみ、一緒に喜んでいくということです。
子ども達が、虫と遊ぶときにも、虫の心を聞きながら遊ぶことが、とても大切なことだと思います。虫の悲しみや喜びに共感しながら遊ぶ世界は、単なるおもちゃで遊ぶ世界にはない豊かさがあります。道具とは異なる心がある命と触れあう中で、私達人間の心も育てられていく世界があるのでしょう。本当の優しさは、他の命の声を聞いていく感受性の中に芽生えていくものではないでしょうか。
梅雨の季節を迎えて、あらゆる命と触れあう中に、子ども達と一緒に本当の優しさを感じられる日々を大切にしていきたいですね。
2024/5/29
満開の桜の花もすっかり散り、新緑の美しい季節になりました。保育園では、新しい年度がスタートし、一ヶ月が経とうとしています。新入園の子ども達にも、素敵な笑顔が見られるようになりました。
さて、約一年半ぶりに広い園庭で走り回る子ども達の姿が、保育園に戻ってきました。トカゲやテントウムシを見つけて、笑顔で喜び合っている子ども達の姿も、工事中には見られないものでした。広い園庭と豊かな自然がある環境は、子ども達にとって、本当にありがたいものだと思います。
親鸞様が、阿弥陀如来様のことを喩えられたお言葉の中に「なお大地のごとし」というお言葉があります。広い大地は、あらゆる命を育み、あらゆる命を支えています。どんな命にも、大地は居場所を与えていきます。野生のタヌキやキツネも人間を見たら一目散に逃げますが、大地を見て逃げる動物はいないでしょう。どんな動物もどんな虫もどんな植物も、大地には安心して身を預けています。大地というのは、仏様のような底抜けの優しさを表わすものでもあるのです。
広い園庭で遊び回る子ども達の姿は、そんな底抜けの優しい働きに抱かれている微笑ましい姿でもあります。子ども達には、いつまでも大きな安心の中で、健やかに過ごしてほしいと願わずにはおれません。
当たり前の日常の中にある子ども達の素敵な姿の上に、掛け替えのない幸せがあることを受け止めながら、一瞬一瞬過ぎていく日々を大切に過ごしていきたいですね。
2024/5/1
春の暖かい空気の中、いよいよ、新年度がスタートしました。新入園児の皆さんをお迎えし、一つずつ大きくなった在園児の皆さんと一緒に、今年度も、笑顔いっぱいの素敵な日々が始まります。
嘉川保育園には、阿弥陀如来様がいらっしゃいます。阿弥陀如来様は、どんな命も同じように愛おしく慈しんでくださるみ仏様です。嘉川保育園で過ごす子ども達一人ひとりが、阿弥陀如来様に慈しまれる掛け替えのない仏の子です。親鸞さまは、喜びも悲しみもあるこの世界は、阿弥陀如来様の優しさで満たされていることを教えてくださっています。温かいみ仏様のお心の中で、日々経験していく一つ一つのことが、子ども達にとってかけがえのない成長の糧となっていくことでしょう。楽しいことも、そうでないことも、毎日が、み仏様から恵まれた大切な宝物です。子ども達の笑顔も涙も、宝物のように大切にしていける保育園でありたいと思います。
今年度は、約1年半続いた大規模整備工事が完了し、ピカピカの新しい環境の中で、嘉川保育園にとっても、新たな一歩がスタートします。ワクワクすることがいっぱいの中、保育園と保護者の皆様とが車の両輪のようになって、子ども達の限りない輝きを支え、一緒にその輝きを心から喜んでいくことが出来ればと思います。どうぞ、一年間、よろしくお願いいたします。
2024/3/27
今年度も、残すところ、あと一ヶ月となりました。今年の発表会は、4年ぶりに人数制限のない形で開催ができ、本当にたくさんのご家族の皆様にお越しいただきました。まことにありがとうございました。それぞれに成長した子ども達の姿を大切に受け止め、残りの一ヶ月も丁寧に過ごしていきたいと思います。
さて、先月の1月9日にアメリカのニューヨーク・タイムズ紙が、2024年に行くべき世界の52ヶ所を発表し、「皆既日食の道」が見られる北米、オリンピックを控えたパリに続いて、3番目に山口市が紹介されました。日本からは唯一の選出でした。山口市民にとっては、まだ実感が湧かない状況ですが、世界で3番目に魅力のある町ということですから、ものすごいことだと思います。
仏教で、お釈迦様が説かれたお経のことを、鏡に喩えられることがあります。これは、仏様のお言葉を聞くことによって、仏様ではない自分自身の有り様が明らかに映し出されていくからです。本当の自分というのは、自分ではなかなか分からないものだということでしょう。
町の魅力というのも、住んでいる者には、案外分からないものなのかもしれません。自分以外のものにばかりに目を向け、羨ましい思いを抱きがちな私達ですが、内に目を向けると、今まで気づけなかったたくさんの感動が、あちらこちらに溢れているかもしれません。
子ども達と一緒に、自分に今恵まれている様々なものに目を向け、たくさんの感謝の中で、喜びに満ちた日々を大切に過ごしていきましょう。
2024/2/29