園長からのひとこと【2024/6】

雨に濡れた紫陽花の美しさが、心和ます季節になりました。田んぼで鳴くカエルの声も、梅雨の季節の到来を告げています。

先日、児童文学作家の、くすのきしげのりさんのお話を聞く機会がありました。くすのきさんは、現在、200タイトルを超える児童向けの絵本を発表されており、その作品は、日本のみならず海外においても広く読まれています。どの作品も、人の心の温かさを題材にした情感豊かな物語が紡がれており、ぜひ親子で読んでいただきたいおすすめの絵本です。

そのくすのきさんが、デジタル化が進む現代において、幼児期に紙の絵本を読むこことの大切さをお話くださいました。紙の絵本は、デジタル機器にはない手触り、重さ、匂いなど、五感を通して物語に触れることができます。また、質の良い物語は、大人も一緒に楽しめるものです。親子で五感を通して、同じ感動を共有できるのが紙の絵本の魅力だそうです。

絵本を読むことで、文章を読み取る力、絵から想像する力が育まれていきます。その力は、相手の心を推し量り、思いやる心へと繋がっていくといいます。また、様々な質の良い物語に触れることは、固定観念や先入観にとらわれない豊かな思考が育てられていくそうです。

幼児期の親子で絵本を読む時間は、子どもにとって、人としての情感が豊かに育っていく大切な時間だということでしょう。雨の多い梅雨の時期、親子でほっかりと感動できる素敵な絵本を読める時間も持てるといいですね。

2024/6/28

 

 

2024-06-28

園長からのひとこと【2024/5】

新緑が美しい季節になりました。これから梅雨の季節を迎えます。雨の季節ならではの美しさや楽しみも、子ども達と一緒にたくさん見つけていきたいと思います。

さて、嘉川保育園の広い園庭には、たくさんの虫達がいます。子ども達は、園庭の虫達と遊ぶのが大好きです。この虫について、先日、興味深い記事を見つけました。それは、2010年代以降、虫について、感情に似た脳機能を持っている可能性があることが、科学論文で報告されることが増えているというものです。虫にも、私達と同じ感情があることが、最近の研究で明らかになりつつあるというのです。

親鸞様は、あるお書物の中で「ものの身となる」というお言葉を遺されています。これは、仏様という存在が、どんな命に対しても、その命の身となっていくものであることを教えられたものです。命の身となるというのは、その命の心を聞き、その命と一緒に悲しみ、一緒に喜んでいくということです。

子ども達が、虫と遊ぶときにも、虫の心を聞きながら遊ぶことが、とても大切なことだと思います。虫の悲しみや喜びに共感しながら遊ぶ世界は、単なるおもちゃで遊ぶ世界にはない豊かさがあります。道具とは異なる心がある命と触れあう中で、私達人間の心も育てられていく世界があるのでしょう。本当の優しさは、他の命の声を聞いていく感受性の中に芽生えていくものではないでしょうか。

梅雨の季節を迎えて、あらゆる命と触れあう中に、子ども達と一緒に本当の優しさを感じられる日々を大切にしていきたいですね。

2024/5/29

 

 

2024-05-28

園長からのひとこと【2024/4】

満開の桜の花もすっかり散り、新緑の美しい季節になりました。保育園では、新しい年度がスタートし、一ヶ月が経とうとしています。新入園の子ども達にも、素敵な笑顔が見られるようになりました。

さて、約一年半ぶりに広い園庭で走り回る子ども達の姿が、保育園に戻ってきました。トカゲやテントウムシを見つけて、笑顔で喜び合っている子ども達の姿も、工事中には見られないものでした。広い園庭と豊かな自然がある環境は、子ども達にとって、本当にありがたいものだと思います。

親鸞様が、阿弥陀如来様のことを喩えられたお言葉の中に「なお大地のごとし」というお言葉があります。広い大地は、あらゆる命を育み、あらゆる命を支えています。どんな命にも、大地は居場所を与えていきます。野生のタヌキやキツネも人間を見たら一目散に逃げますが、大地を見て逃げる動物はいないでしょう。どんな動物もどんな虫もどんな植物も、大地には安心して身を預けています。大地というのは、仏様のような底抜けの優しさを表わすものでもあるのです。

広い園庭で遊び回る子ども達の姿は、そんな底抜けの優しい働きに抱かれている微笑ましい姿でもあります。子ども達には、いつまでも大きな安心の中で、健やかに過ごしてほしいと願わずにはおれません。

当たり前の日常の中にある子ども達の素敵な姿の上に、掛け替えのない幸せがあることを受け止めながら、一瞬一瞬過ぎていく日々を大切に過ごしていきたいですね。

2024/5/1

 

 

2024-05-01

園長からのひとこと【2024/3】

春の暖かい空気の中、いよいよ、新年度がスタートしました。新入園児の皆さんをお迎えし、一つずつ大きくなった在園児の皆さんと一緒に、今年度も、笑顔いっぱいの素敵な日々が始まります。

嘉川保育園には、阿弥陀如来様がいらっしゃいます。阿弥陀如来様は、どんな命も同じように愛おしく慈しんでくださるみ仏様です。嘉川保育園で過ごす子ども達一人ひとりが、阿弥陀如来様に慈しまれる掛け替えのない仏の子です。親鸞さまは、喜びも悲しみもあるこの世界は、阿弥陀如来様の優しさで満たされていることを教えてくださっています。温かいみ仏様のお心の中で、日々経験していく一つ一つのことが、子ども達にとってかけがえのない成長の糧となっていくことでしょう。楽しいことも、そうでないことも、毎日が、み仏様から恵まれた大切な宝物です。子ども達の笑顔も涙も、宝物のように大切にしていける保育園でありたいと思います。

今年度は、約1年半続いた大規模整備工事が完了し、ピカピカの新しい環境の中で、嘉川保育園にとっても、新たな一歩がスタートします。ワクワクすることがいっぱいの中、保育園と保護者の皆様とが車の両輪のようになって、子ども達の限りない輝きを支え、一緒にその輝きを心から喜んでいくことが出来ればと思います。どうぞ、一年間、よろしくお願いいたします。

2024/3/27

 

 

2024-03-27

園長からのひとこと【2024/2】

今年度も、残すところ、あと一ヶ月となりました。今年の発表会は、4年ぶりに人数制限のない形で開催ができ、本当にたくさんのご家族の皆様にお越しいただきました。まことにありがとうございました。それぞれに成長した子ども達の姿を大切に受け止め、残りの一ヶ月も丁寧に過ごしていきたいと思います。

さて、先月の1月9日にアメリカのニューヨーク・タイムズ紙が、2024年に行くべき世界の52ヶ所を発表し、「皆既日食の道」が見られる北米、オリンピックを控えたパリに続いて、3番目に山口市が紹介されました。日本からは唯一の選出でした。山口市民にとっては、まだ実感が湧かない状況ですが、世界で3番目に魅力のある町ということですから、ものすごいことだと思います。

仏教で、お釈迦様が説かれたお経のことを、鏡に喩えられることがあります。これは、仏様のお言葉を聞くことによって、仏様ではない自分自身の有り様が明らかに映し出されていくからです。本当の自分というのは、自分ではなかなか分からないものだということでしょう。

町の魅力というのも、住んでいる者には、案外分からないものなのかもしれません。自分以外のものにばかりに目を向け、羨ましい思いを抱きがちな私達ですが、内に目を向けると、今まで気づけなかったたくさんの感動が、あちらこちらに溢れているかもしれません。

子ども達と一緒に、自分に今恵まれている様々なものに目を向け、たくさんの感謝の中で、喜びに満ちた日々を大切に過ごしていきましょう。

2024/2/29

 

 

2024-02-29

園長からのひとこと【2024/1】

新しい年が明けて、早くも一ヶ月が過ぎようとしています。今年は、お正月から能登半島地震が起こり、日本中が驚きと悲しみに包まれる中で始まりました。時間が経つにつれ、その被害の大きさと悲惨さが明らかになっています。

仏教の修行の一つに「ダーナ」と呼ばれるものがあります。日本では「布施(ふせ)」という言葉で伝わっているものです。布施という行為は、「苦しみを抱える人のために、自分が大切にしているものを手放し、幸せを分け与えていく」という意味があります。布施の行いの中には、募金のような財施という行いもありますが、その他にも、笑顔を見せる和顔施や好ましい眼差しを送る眼施、また、座る場所を譲る床座施など、私達が普段気をつけて行うことができる些細な行為もたくさん説かれています。

地震から四日目、ボランティアによる炊き出しに涙を流す被災者の姿が報道されていました。苦しくてどうしようもない時、人の些細な優しさが、その苦しい心を大きく癒やしていくのでしょう。一人一人、できることには限りがありますが、私達も、人の痛みに無関心になるのではなく、一緒に心を痛めながら、自分にできる些細な優しさを大切にしていきたいですね。

保育園では、発表会の練習が進んでいます。一生懸命に取り組む子ども達の姿には、いつも大きな感動を頂いています。人数制限のない発表会は、実に四年ぶりになります。子どもも保護者も職員も、みんなが笑顔になれる素敵な発表会になると思っています。ぜひ、子ども達に温かい応援をよろしくお願いします。

2024/1/29

 

 

2024-01-29

園長からのひとこと【2023/12】

年末の慌ただしさが、身に染みる季節になりました。今年も終わりを迎えようとしています。

さて、ちょうど一年前に、新園舎建築工事に伴い、園庭のクスノキが伐採されました。大きく枝を張り、子ども達に素敵な木陰を作ってくれたクスノキは、嘉川保育園のシンボルツリーでした。一年前、重機によって、大きな枝がもぎ取られていく様子を、子ども達と一緒に、寂しい気持ちで眺めたことを思い出します。

この度、そのクスノキが、素敵なベンチになって、嘉川保育園に帰ってきてくれました。嘉川保育園から徒歩2分程度の場所にあるシーティング工房Haruの社長さんが、新園舎完成の御祝に、手作りでプレゼントしてくださいました。社長さん自身も卒園児です。昨年まで園庭の木陰となって子ども達を支えてくれたクスノキが、これからは、体を休めるベンチとなって子ども達を支えてくれます。

無残に伐採されたクスノキの命が、無駄にならなかったことにほっとしています。また、形を変えながらも支えてくれる、命のありがたさも感じます。私達は、日々、様々な命の犠牲の上に生かされて生きています。その犠牲をしょうがないと済ますのではなく、なんとか無駄にしないように心がけるところに、人間らしさがあるのでしょう。それは、ありがとうの思いをたくさん持ちながら、日々過ごすことに他なりません。

今年も、世界に目を向けると、戦争によってたくさんの人々の悲しみが、世界を満たした一年でした。来年は、笑顔溢れる一年になることを願わずにはおれません。お互いに、様々なものに支えられている身のありがたさを味わい、一年の終わりを温かい感謝の想いの中で大切に迎えていきたいですね。

2023/12/22

 

 

2023-12-22

園長からのひとこと【2023/12】

短い秋が終わりに近づき、急に冬の気配を感じるようになりました。感染症の流行も心配されます。体調に気をつけながら、寒い冬の季節を楽しみましょう。

さて、先日、年長組の子ども達が、新園舎の床に使われている木について尋ねてくれました。様々な木を紹介する絵本を見て、興味を持ってくれたようでした。

新園舎の床に使用されている木は、楢(なら)の木です。一般的には、ドングリが実る木として知られています。設計監理を担当してくださった日比野設計社が、子どもの心情に最も安心感と居心地の良さを感じさせる資材を、実証実験を重ねて選んでくださったものです。

木というのは、古来より人の生活に欠かせないものでした。しかし、現在、人の生活が優先されすぎたことにより、世界中で森林破壊が問題になっています。今も、一週間ごとに東京都と同じ広さの森林が失われ続けているそうです。森林が失われていくと、多くの野生動物が絶滅し、気候変動が拡大していきます。そして、それは、人の生活を大きく脅かしていくことになるのです。命は、大きな繋がりの中にあります。人だけの都合を貪り、他の命に対する思いやりを失うと、その人もまた苦しんでいくことになるのです。

多くの命が支え合う繋がりの中に、私達は、生かされて生きています。人以外の命は、人の都合を叶えるための道具ではありません。保育園の床になってくださった楢の木も、掛け替えのなさをもって一生懸命生きた命なのです。そう思うと、木の床もまた、大切にさせていただかなければなりません。

まもなく、どんな命も同じく尊いことを教えてくださったお釈迦様の成道会を迎えます。自分以外の様々な命に敬いと思いやりの心を持ち、今年最期の一ヶ月を優しく丁寧に過ごさせていただきましょう。

2023/11/25

 

 

2023-11-25

園長からのひとこと【2023/11】

朝夕に肌寒さを感じるようになり、秋の季節が深まってきました。先日の運動会では、小学校の体育館という慣れない環境の中でしたが、子ども達の大きく成長した姿を保護者の皆様と一緒に喜べる時間がもてました。様々なお願いにも快くご協力くださり、まことにありがとうございました。

さて、先日、お寺の向かいの畑に植えられているフジバカマの花に、アサギマダラという珍しい蝶々が遊びに来てくれました。保育園の子ども達も、フジバカマの周りをヒラヒラと飛び回るアサギマダラの姿に目を輝かせていました。年長組の子ども達に、「あの蝶々は、外国から海を渡って飛んできたかもしれないよ」と教えてあげると、口々に驚きの声をあげていました。

アサギマダラは、海を渡る蝶々として有名です。日本国内を移動するものもいれば、海を渡り、台湾や中国大陸まで2000キロ以上移動するものも発見されているそうです。10センチに満たない小さな虫が、2000キロもの距離を旅するとは驚きです。命が持つ不思議な力に、ただただ感動するばかりです。

親鸞さまのお言葉の中に「邪見憍慢(じゃけんきょうまん)の悪(あく)衆生(しゅじょう)」というものがあります。真実を歪(ゆが)め、本当のことをまともに見ようとせず、偉そうに他の命を見下し、自分以外のものを傷つけていく悪い人間という意味です。私達は、ついつい、虫や草花、動物などを、人間よりも劣った命として見てしまいがちです。しかし、本来、命というものは、どんなものにも人間には計ることの出来ない輝きがあり、不思議としか言いようのない感動が溢れているのではないでしょうか。小さな虫にも目を輝かせていける子ども達の心は、とても素敵なものです。

秋の深まりの中、子ども達が持つ素敵な心に共感し、様々な命の息づかいを一緒に喜んでいける大人でありたいものですね。

2023/10/29

 

2023-10-29

園長からのひとこと【2023/10】

残暑が続く中にも、少しずつ秋の訪れを感じるようになりました。今年は、工事中のため、興進小学校の体育館での運動会となります。異なる環境の中でも、一生懸命頑張る子ども達の姿が、保育園を彩ってくれています。

さて、今年の中秋の名月は、9月29日でした。最も、お月様が美しく輝いた日です。月の明かりというのは、太陽の強い光とは違い、私達の心にほっとした安らぎを与えてくれます。しかし、月は、月そのものの力で美しく輝くことは出来ません。真っ暗な夜に、太陽の光を受けて、はじめて美しく輝くことができるのです。
私達も、月のようなものではないでしょうか。太陽のように、強い光で様々なものを輝かせていく人も世の中にはいることでしょう。しかし、多くの人は、様々なものの輝きに照らされて、はじめて輝くことができるのではないでしょうか。

人が輝くというのは、その人を輝かせる様々な働きがあってのことでしょう。子ども達も、ご家族の方やお友達、先生方、様々な人々の輝きに照らされて、キラキラと輝いていけるのだと思います。

真新しい新園舎の環境に喜びいっぱいの子ども達ですが、工事中の限られた環境の中で運動会の練習に取り組むことは、本当に大変なことだと思います。そんな中でも、きっと、周りの方々の光をいっぱいに受けて、月のように多くの人々の心に感動を与える輝きを見せてくれることと思います。今年も、様々な制限がある運動会となりますが、子ども達に温かい応援をよろしくお願いします。

2023/9/29

 

2023-09-29